各種検査について

尿の検査

どんな検査!?
血液によって腎臓に運ばれた体の中にある不要物は、余分な水分と一緒に尿として排泄されます。こうして老廃物を処理するとともに、全身の血液や体液の成分を一定に保っているのです。腎臓や体のどこかに異常があると、尿の成分や性質、量などに影響が出ます。
体の異常を知らせるサインを調べるのが尿検査です。
基準値
尿たんぱく(たんぱく定性)  陰性(-)・偽陽性(+-)
尿糖(糖定性)  陰性(-)・偽陽性(+-)
尿ウロビリノーゲン(定性)  弱陽性(+)・偽陽性(+-)
尿ビリルビン(定性)  陰性(-)
尿pH(ペーハー)  pH4.8~7.5
尿潜血反応  陰性(-)
尿中ケトン体(定性)  陰性(-)
尿沈査(赤血球)1視野に1個~3個以内 (白血球)1視野に1個~3個以内 (上皮細胞)1視野に1個~3個以内
尿量  500~2000ml(1日)
尿比重  1.010~1.025
検査でわかること
- 尿たんぱく(たんぱく定性) -
陽性(+)の場合、再検査を行います。ただし、腎臓や尿路系にとくに異常がなくても、発熱時や立ちっぱなしでいるとき、運動のあと、精神的ショックや疲れなどで一時的に陽性になることがあります。
再検査をしても異常値が出る場合は、腎炎、ネフローゼ症候群、腎硬化症(じんこうかしょう)、糖尿病、膠原病(こうげんびょう)などが疑われます。
- 尿糖(糖定性) -
尿に含まれるブドウ糖のことです。
尿糖検査は、尿の中に糖がでているかどうかを試験紙で調べる定性検査と、1日の尿中に含まれる
糖の量を測定する定量検査があります。
定性検査の結果が陽性(+)~(++)の場合は、異常と考え糖尿病を疑って、再検査を行います。
ただし、尿糖の検査結果が陰性であっても、糖尿病ではないとは限りません。糖尿病をみつけるには、尿糖よりも空腹時血糖値ヘモグロビンA1Cの値がスクリーニングとして優先されます。
なお、健康な人でも、甘いものを食べすぎたあとや強いストレスを受けた時は、一時的に尿糖が陽性に出ることがあります。また体質的に尿の中に糖が出やすい「腎性尿糖(じんせいにょうとう)」の人もいます。腎性尿糖は病気ではないので心配はいりませんが、将来、糖尿病に移行する可能性も
あるので、年に1回は検査を受けておくと安心です。妊娠中にも生理的に尿糖が出やすくなります。
- 尿ウロビリノーゲン定性 -
採取した尿に試験紙を入れてウロビリノーゲンがでているかどうかを調べます。
試験紙が強く変色する陽性(++)か、変色しない陰性(-)は異常値と考えます。
中等以上の陽性なら、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変などが疑われ、陰性の場合は胆道閉鎖を考えます。ほかの肝機能検査などの結果とあわせて診断し、精密検査を行います。
- 尿ビリルビン定性 -
採尿した尿の中に試験紙を入れて、色の変化をみます。
弱陽性(+)、偽陽性(+-)の場合は、体質的黄疸(おうだん)などが疑われます。陽性(++)では、肝炎(かんえん)、肝硬変(かんこうへん)、肝がん、胆道疾患などが疑われます。
- 尿ph(ペーハー) -
尿の酸性度をみてからだの異常チェックをします。
pH7.6以上だとアルカリ性で、尿路感染症(にょうろかんせんしょう)や腎疾患などが疑われます。
一方、pH4.7以下だと酸性で、糖尿病、呼吸性・代謝性のアシドーシス、発熱、アルコール中毒などが疑われます。
- 尿潜血(にょうせんけつ)反応 -
採尿した尿の中に試験紙を入れて、色の変化をみます。
陽性(+)を示す場合は、膀胱炎、腎臓や尿管(にょうかん)の結石(けっせき)などが疑われます。
女性の場合、月経血が尿に混入すると、尿潜血反応が陽性に出てしまいます。外陰炎(がいいんえん)や膣炎(ちつえん)、閉経後の萎縮性(いしゅくせい)膣炎でも陽性になります。陽性の場合は再検査を行います。腎機能や尿路が正常な尿潜血であれば、その後しばらくして再検査を行うと陽性になります。
- 尿中ケトン体(定性) -
体内でエネルギー減としての糖が足りなくなったときに、その代わりに脂肪が分解されて生じる老廃物がケトン体です。尿中に検出されるケトン体を尿ケトン体といいます。糖尿病や食事がとれないとき、ダイエット中などに、尿ケトン体がふえます。尿ケトン体がふえると、尿は甘酸っぱいにおいがします。
偽陽性(+-)、陽性(+)の場合は異常で、糖尿病の高血糖状態や飢餓状態などの疑いがあります。
なお、下痢やおう吐、脱水時m妊娠中のつわりでも陽性を示します。
- 尿沈査(ちんさ)[赤血球、白血球、上皮(じょうひ)細胞) -
尿を遠心分離にかけて、その沈殿物を顕微鏡で観察して調べるのが尿沈査です。赤血球、白血球、上皮細胞をみていきます。
腎臓や尿路(にょうろ)の病気の診断に重要な検査です。また全身いろいろな病気の手がかりを得ることができます。尿たんぱくや尿潜血(せんけつ)検査で、異常が出たときにも行います。
異常の場合は、赤血球、白血球、上皮細胞が多量にみられます。異常が見られる場合は、腎盂腎炎(じんうじんえん)、膀胱炎、糸球体腎炎(しきゅうたいじんえん)、ネフローゼ症候群、結石(けっせき)、がんなどの病気が疑われます。そのほか全身の感染症や痛風(つうふう)でも多くみられることがあります。異常が出たら再検査をします。
- 尿量 -
1日の尿量が100㎡以下を無尿、400㎖以下を乏尿といいます。2500㎖以上は多尿といい、いずれもなんらかの異常が起きていると考えられます。
尿量が少ない無尿や乏尿は、腎臓の機能が著しく低下した状態を示します。急性腎不全(きゅうせいじんふぜん)、慢性腎不全(まんせいじんふぜん)、ネフローゼ症候群などが疑われます。また、がんや結石で尿管がふさがれて無尿になることもあります。全身の脱水症状を起こしている場合も尿量が低下します。
多尿の場合は、急性腎不全の回復期や糖尿病のときに起こります。尿量を調節するホルモンの分泌異常が原因の尿崩症(にょうほうしょう)でも起こります。また、心因性多尿もあります。
コーヒーやアルコールを飲んだあとは、利尿作用によって尿量が増えます。逆に運動をしたり大量の汗をかくと尿量は減りますが、これは一過性のもので、異常ではありません。
- 尿比重 -
尿には、体内で不要になったさまざまな成分(老廃物)が溶け込んでいるので、水より比重は高くなっています。
腎臓になんらかの問題があると、尿が非常に濃くなったり薄くなったりします。この比重を測って腎臓の異常の有無を調べることができます。
尿比重が高い値の場合、糖やタンパクが漏れ出していると考えられます。疑われる病気は、糖尿病、心不全、ネフローゼ症候群などです。
尿比重が低い値の場合、腎臓の尿濃縮力が低下する慢性腎炎や尿崩症が疑われます。水分の過剰摂取や利尿剤の服用でも値が下がることがあります。